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水牛だより

古いほど美しい

中国南部からインドシナ山岳地帯に暮らすヤオ族の刺繍布を見に行く。
黒い手織布に濃紺、こげ茶、白などの糸で、子どもやお金に恵まれる抽象的な印が一面に刺繍されている。婚礼のとき花嫁がヴェールにするための布で、花嫁の母親が作る。そして婚礼の後はお守りのように身近に置いて、命が尽きると布もいっしょに葬られるのだそうだ。20年から50年前の布は、不思議に古いものほど美しい。
銀座煉瓦画廊で16日(日)まで。

ヤオ族の村に通い続けて、これらの布を集めたのはアーチコレクションの美濃正さん。もう何年も前にデパートの催事場で出会った。タイの少数民族の布展を見に行ったら、そこに出展していたひとりが美濃さんだった。コレクションなどの話がおもしろく興味が尽きないので、そのうち水牛に書いてもらおうと思っている。
その時に買った、びっしりと刺繍された古い布の帽子と折りたたみのできる木製の枕、そして竹で編んだ低いスツールは、みな今も愛用している。枕は頭がむれるということがなく、とてもいい。
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# by suigyu21 | 2007-12-12 00:43 | Comments(0)

エストニアスパイラルをためす

寒くなった。ことしは冬がやってくるのかどうかと疑わしくなるような秋だったけれど、ちゃんと冬です。

通りがかった手芸用品の店で毛糸の安売りをしていた。きれいな色の暖かそうなやつを買って、レッグウォーマーとリストウォーマーを編む。エストニアスパイラルという編み方を試してみたかったのだ。まっすぐ編んでいるのに、ぐるぐるとスパイラルになってゆく。ちいさなものはすぐにかたちになるところがいいな(飽きっぽいので大物は挫折する)。糸と針だけあればできるというのもいい。それに足首や手首など、首という名のつくところを暖かくしていると薄着でも寒くない。
とはいえ、編み物が好きだからといって家庭的というわけではぜんぜんない。

はじめて会ったひとが、すでにわたしが知っているひとの知り合いだったということが多くなったのはなぜだろう。みんなどこかでつながっている。広いはずの世界がちぢまってゆくようだ。
# by suigyu21 | 2007-12-03 14:07 | Comments(0)

水路の上の道を行くと

気候のいいときには緑道を2キロほど歩いて繁華街まで行く。緑道という名のとおり、木々は繁り、きれいな花だって咲いている。が、両側の家がみな裏側を向けて建っているのが気になる。緑道はかつて水の流れていたところなので、こちら側を玄関にすることはできなかったわけだから当然なのだけど、両側に家の後ろ姿がすきまなく並んでいる道というのは、ふつうではないと思う。

途中の公園では、男の子たちがおもちゃのマシンガンで撃ち合いをしている。そのうち片方の子が走り出して「テロリストだ〜、逃げろ〜」と叫びだした。古典的な遊びも現実によって少しずつ変わっているのだ、それもイヤな方向へ。

太陽はあかるく輝いて、あたたかな光を届けてくれるけど、あまり愉快になれない初冬の午後だった。
# by suigyu21 | 2007-11-20 22:53 | Comments(1)

カミングアウト

「ミーハーの分子を持ってゐ、それを隠さない、といふことが、本もののインテリである証拠である。」(森茉莉)

ミーハー、それはわたし。だってメンクイですもの。本もののインテリの資格があるのね!
# by suigyu21 | 2007-11-09 21:34 | Comments(2)

姉です

水牛を更新しました。見てね。

片岡義男さんの翻訳を読んだことがないので、図書館の保存庫から『ふくろうが私の名を呼ぶ』(マーガレット・クレイヴン 片岡義男訳 角川書店1976)を借りて読んだ。タイトルに惹かれたわけです。
不治の病をかかえた青年牧師がキングカムという人里をはなれたインディアンの村に派遣される。そこではじめて会うインディアンの若者。「高慢さとは関係のない、誇りが、インディアンの目にあった。その誇りのすぐ後ろには、深い悲しみが横たわっていた。深すぎるほどに深い。マーク・ブライアンの想像をはるかにこえた太古の神秘にまでつながっているような悲しみだった。」
マーク・ブライアンという青年牧師は病気ではなく、地すべりによって事故死する。それまでの二年ちかくをインディアンたちの村で暮らし、生きることを学んでいくうちに、彼の目にも悲しみが横たわるようになっていた。
ドラマティックに陥らず、静謐で抑制のきいた描写は、まるで片岡さんのスタイルそのままのようだけど、実際の経験を著者が70歳をすぎて書いたことと関係がありそうだ。

片岡さんといえば。
あるとき地下鉄のプラットフォームで片岡さんと立ち話をしていたら、「まるできょうだいのように見える」と言われた。もちろん、わたしが姉で片岡さんは弟である。年齢ではなくキャラクターのモンダイです。
# by suigyu21 | 2007-11-01 22:27 | Comments(2)