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水牛だより

冬の旅は春の歌

きょうから冬だというようにどんよりした日、12月が始まった。

 ミュラー--緑の草はどこにある?
 思い出の世界のなかに。
 もしわたしの心が流れる血液ならば
 流れるそのすべてはわたしの顔だ。
「冬の旅」全体が、まさに春の歌である。
 時間が突然溶ける。自然は、もはや流れる喜びに他ならない。泉と山々では、氷が溶けてゆく。過去が溶けるということが、天候=時間(le temps)なのだ。往古のきらめきが、春なのである。
(パスカル・キニャール『深淵』村中由美子訳 水声社2022)

ことしはまだ一度も「冬の旅」をきいていない。よくないことだ。YouTubeにはたくさんの「冬の旅」がある。いろんなピアニストといろんな歌手。たくさんあるからといって、次々ときいてみるのがいいとは限らない。
「冬の旅」は24曲もあるので、きくたびごとに好みの曲がかわったりする。去年は「まぼろし」がとてもよかった。山本清多さんの、うたえる訳もよい。

  美しい光に
  魅かれ いざなわれて
  まぼろしの光と
  知りながら なのに
  ああ 惨めすぎると
  人は 身をまかせる
  たとえ まぼろしでも
  温かい家と 愛らしいあの娘の
  たとえ まぼろしでも


by suigyu21 | 2022-12-01 14:43 | Comments(0)