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水牛だより

何もしない

ゴールデンウィーク初日の朝、換気のためにドアをあけると、ちょっと生臭いスダジイの花の匂いに満ちた外気が一気に家のなかに入ってくる。きのうはそんなことはなかったから、花は今朝から開いたのだろう。匂いはいつも開花のはじまりが際立っている。スダジイの大きな樹は集合住宅の裏に一本だけある。見に行ったら、緑に近い黄色の花の色で、樹の表面がけむっていた。これからもっと咲く気配だ。

人々はゴールデンウィークで忙しそうだ。せっかくのおやすみなのに、ますます忙しく、疲れそう。ジェニー・オデル『何もしない』という本を読んで、生まれながらに持っている性癖が覚醒してしまった感じ。忙しさから逃れて、できれば寝て暮らしたい。

何かひとつ仕事がおわると、次は何をしようかなと考えてしまう。資本主義に毒されているのだろうけれど、次に何をしようかと考えるのは楽しいことでもある。が、「しない」方向にシフトしてみたいと思うようになった。

ケネス・グレアム『たのしい川べ』は1908年に書かれた。自分のこどものためのおはなしのようだ。前世紀初頭にすでにこんなふうに書かれている。そう、「ぼくらは、いつもいそがしい」だからこそ「それをやりたきゃ、やるのもいいさ。だけど、やらないほうが、まだいい」

どこかへ出かけようが、出かけまいが、目的地へつこうが、ほかのところへいってしまおうが、それともまた、どこへもつくまいが、ぼくらは、いつもいそがしい。そのくせ、これといって、特別のしごとがあるわけじゃない。そして、一つのことをやってしまうと、また、なにかやることがある。だから、それをやりたきゃ、やるもいいさ。だけど、やらないほうが、まだいい。(ケネス・グレアム『たのしい川べ』 石井桃子訳 岩波書店)


by suigyu21 | 2022-04-29 21:20 | Comments(0)