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水牛だより

あいまいで自由な衣服を着て

心地よく眠ることは最大の関心事のひとつなので、眠るときに着るものには自分なりのこだわりがある。身体をしめつけずに裸よりも着ているほうが気持ちのよいもの、ということで、かつては膝下くらいまでの長さのあるTシャツを愛用していた。パジャマはあまり好きではない。震災を経験してからは、Tシャツ一枚ではなにかあったときに困るので、ズボンをはくようにしているが、ほんとうはズボンはないほうがいい気持ち。
『もう一つの衣服、ホームウエア 家で着るアパレル史』(武田尚子 みすず書房 2021年)は私のための本だと思いながら読んだ。「ホームウエア」とは、外着でもあり下着でもある、あいまいで自由な衣服、だそうだ。ここに出てくるブランドはみな知っている。着たら快適だろうと思っても、あまり高価なものはなんとなく買う気にならない。貧乏性? いや、自分で着古してよれよれになったTシャツの快適さのほうが好きなのだろう。

まだ大人用の紙おむつが一般的でなかったころ、病院で死の床にいた伯母のために、看護師さんが古いシーツなどを持ってきてください、と言った。おむつに使うから古い布でいい、というわけではなかった。何度も洗って柔らかくなった布のほうが肌にやさしい。

本を読むのは眠る前のことが多い。お気に入りのよれよれを着て、ふとんに横になって、お気に入りの一冊を広げる。横になっているので、寝落ちすることも多いが、それはそれでよしとしなければ。椅子にすわってきちんと本を読むのは味気ない。
読んでいる時間は5分(!)のこともあるし、2時間くらいのこともある。いずれにしてもこれだけの時間なのだから、生きているあいだに読める本よりは、読めない本のほうがずっと多い、ということが実感としてせまってきている。あれもこれも読みたいのに。

いまはゼイディー・スミス『ホワイト・ティース』(新潮社 2001年)を図書館で借りて読んでいる。裏表紙にはサルマン・ラシュディのコメントがある。新潮社のクレスト・ブックスは本文用紙がわりとすぐにセピア色に変化(劣化?)しはじめるので、2001年に出たこの本はじゅうぶんに古びていて、いい感じだ。上下巻の長い小説だが、テンポよく、するするとおもしろく読める。最近、文庫になったみたいだ。

先週は久しぶりに書店に行った。空いていたので、楽しくあれこれ物色して、『ベケット氏の最期の時間』(マイリス・べスリー 堀切克洋訳 早川書房 2021年)を買った。その前に書店を通りかかったときに買った『波』(ヴァージニア・ウルフ 森山恵訳 早川書房 2021年)もあるし、古書店で手に入れた『シルヴィア・プラス 沈黙の女』(ジャネット・マルカム 井上章子訳 青土社 1997年)もある。女性率が高い。


by suigyu21 | 2021-08-01 16:11 | Comments(0)