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水牛だより

小説のなかの人

偶然、2冊の小説を続けて読んだ。2冊ともある種のシリーズで、読みたいものが続いてしまったという偶然だ。どちらも主人公が魅力的だから読み続けているのだが、シリーズのなかでも時間が過ぎていき、主人公はふたりとも「高齢者」となっていた。

オリーヴ・キタリッジは心臓発作を起こして、ちょっとだけ心肺停止状態になっていたが、ICUに搬送されて無事に生還。しかしそのうちひとりで暮らすのが困難になり、地元の老人ホームに入った。かつてはその老人ホームで暮らす人を訪ねて会話をすることで、その老人に活力を与えていたのだった。オリーヴを訪ねてくれる若者がいるといいな。少なくともストーリーのおしまいには誰も来ていない。(『オリーヴ・キタリッジ、ふたたび』)

マット・スカダーは歩くと膝が痛くなるくらいまで年をとっていた。再婚相手のすてきなエレインがそのことを気遣っている。でも、マット・スカダーは相手が誰であれ、会話がおもしろいのはかわっていない。付かず離れず、それでいてときどき核心に入る。そのときのピシッという音が聞こえるようだ。膝は痛そうだけど、かっこいい。(『石を放つとき』)


by suigyu21 | 2021-01-28 20:27 | Comments(0)