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水牛だより

キミは誰ですか?

同年代の女性の友人に会いに行った。横浜のはずれにある彼女の家に到着すると、結婚して遠くに行ったはずの娘がいる。私が知らないだけだったのか、生まれたばかりのような小さな男の子を抱いている。赤ん坊が男の子であることになぜだか疑いはない。久しぶりに会ったので、あれこれ話していると、赤ん坊が手をのばして、私のところに来たがっているのみたいだった。おいで、と両手を差し出して抱いてみると、不思議なほどに手足が長い。赤ん坊の体としてはバランスが悪いなあ。ためしに彼の長くまっすぐな脚を伸ばしてみると、ほとんど私の脚とおなじ長さまでどんどん伸びていく。キミは誰なの? と思った一瞬ののちには丸々としたふつうの赤ん坊に戻っていた。そして、かわいい。

午後の明るい光に満ちた林を歩いていく。はじめてのところだけれど、なんとなく懐かしい気持ちがする。ここまでどうやって来たのだろう。向こうから古い知り合いの彼が歩いてくる。以前より若くなったみたいだ。微笑みあってから、いつもそうするように彼の右手を握ると、あたたかい。そしてそのまま二人で歩いていく。歩きながらときどき彼の目を見るだけで、なにも話さない。あれ? キミはとっくに死んだんじゃなかったけ? と思いながら、でも手を離さずにゆっくりと歩いていく。

一晩のうちに見たふたつの夢のことをこうして書いてみると、なんだかばかばかしい感じがしてくる。脳内の出来事なのに、存在しないはずの赤ん坊の脚がするすると伸びていく感触と、死んだはずの彼の手のあたたかさが、目覚めたあとも肉体の感覚として残っているのがなんとも不思議で、そのために夢をずっと覚えている。
by suigyu21 | 2019-06-01 20:48 | Comments(0)