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水牛だより

五月が導く

自宅の裏にある大きなスダジイが一気に花開いた。むせるような花の匂いが一本の大木の周囲に広く満ちている。夜に降った雨でどうなったか、雨が止んだのでドアをあけてみたら、だいじょうぶ、まだ匂っているどころかさらに生臭さをおびた強い匂いになっている。今夜は小さな白い花で木が白っぽく膨張している。生命力という言葉を思う。

片山廣子は青空文庫で偶然に出合った。
青空文庫のトップページの右上に「www.aozora.gr.jp 内を検索」という窓があり、検索をいろいろと楽しめる。作家や作品を探すという目的が決まっているときはもちろん役立つ機能だが、たわむれになにか語句を入れてみると、図書カードや作品中にその語句が使われているところが表示される。

あるとき、五月、という語句を入力して検索してみたら、ものすごくたくさんの検索結果のなかに「或る国のこよみ」があって、読みにいった。それが片山廣子との始まりの一歩で、収録されているどれも短いエッセイをすべて読んだ。はじめて読んだ「或る国のこよみ」は翻訳者として、短歌を詠む人として、そしてエッセイストとして片山廣子の三つのエッセンスが詰まっていたのだった。これらのエッセイが収録されている書籍の『燈火節』(つまり、青空文庫に収録されているエッセイの底本です)もちゃんと読んだ。『火の後に』という翻訳集成も出ている。小説や詩、戯曲を訳していることは知っていたけれど、ミステリーも訳していることをこの本で知って、うれしい。

デジタルでもこんなふうな本(?)との出合いがあることを強調しておきたい。書店でお目当ての本の隣りにある本につい目がいって、おもしろそうと思って読んでみたら大当たり、という経験と少しだけ似ているし、それ以上でもあると感じた。検索という機能はこれからもっと深まっていくに違いない。たぶん、おそらく、きっとね。


by suigyu21 | 2018-04-28 21:16 | Comments(0)