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水牛だより

命は養うもの

テーブルの上に置きっぱなしの栃の実をときどき触ってみる。少し縮んだ。これで保存態勢になったのかもしれない。

10月は生まれた月だ。誕生日の夜は国際ドキュメンタリー映画祭で山形にいて、東京から各々行っていた人たちと遅い夜に集まって夕食をした。すでに飲み始めていた人もいたけれど、とりあえず「おめでとう」と乾杯をしてもらった。こんなふうに偶然そこにいる人たちと軽く過ごせる誕生日がいい。一年は365日しかないのだから、同じ誕生日の人はたくさんいるにきまっている。そのことを証明するように、乾杯してくれた人の一人のお母さんと同じ誕生日だった。

夜の映画を会場の前の広場で待っているときに、東京の友人から電話があった。生まれてきてよかったねと言われた。誕生日のいまこのときだけでなく、これまでの時間のすべてにおいてそれは言えるよ、と。お祝いに養命酒を送る、と言われたときには、もう高齢だから、というひと言が明らかに言外に聞こえたので笑った。この電話が養命酒より効いたから、もうじゅうぶん、実際に送ってくれなくてもいいんです。渋谷から帰宅するときに乗るバスが最初に停まるのは「道玄坂上」で、目の前が養命酒ビルなのよ、と私。そう、まだあるんだ、昔、近所に住んでいたお姉さんが勤めていたなあ、と友人は言った。

まだ夏の暑さが充分すぎるほどに残っている日に、カタルーニャ料理をごちそうになって、おしまいにくるみのリキュールを飲んだ。お酒の黒い色は薬草が溶け込んだ色だという。甘くて薬くさくて、食事のあとによろしい感じがする。養命酒みたいだね、と言い合って飲んだ。帰りの電車に乗り、運よく座席にすわってふと正面を見ると、窓とドアの間に貼ってある小さなステッカーでゴルゴ13が勢いよく養命酒を宣伝していた。偶然なのだろうか。飲んだときにはまったく平気だった養命酒のようなくるみのリキュールは帰宅したころにじわじわ効いてきて、気持ちのよい眠りに落ちた。
by suigyu21 | 2013-10-20 21:10 | Comments(1)
Commented by おーの at 2013-11-01 13:56 x
そう言えば養命酒の工場は信州・駒ヶ根(正確には宮田村?)にあります。
中央アルプス駒ケ岳の花崗岩でろ過された水でできていますね。