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水牛だより

音楽の八月

8月22日、ひさしぶりにサントリーホールに行った。去年の夏以来のような気がする。サマーフェスティバル 2012<MUSIC TODAY 21>の「フランコ・ドナトーニ 〜 生誕85年記念 〜<管弦楽作品集>」と題された一夜。

杉山洋一さん指揮の東京フィルハーモニー交響楽団が演奏したのは5曲。「イン・カウダ(行きはよいよい帰りは怖い)II(1993-1994)」「イン・カウダ(行きはよいよい帰りは怖い)III(1996)」「エサ(イン・カウダV)(2000)」「プロム(1999)」「ブルーノのための二重性(1974-1975)」5曲すべてが日本初演だ。

「水牛」を読んでいる人なら、杉山洋一さんといえば「しもた屋之噺」を10年以上にわたって一度の休載もなく連載を続けている人だとわかるだろう。そしてその連載の中にはドナトーニのことが何度となく書かれている。だからこの機会を逃したくなかった。曲も演奏もよかった。そう感じたのは現代音楽ではひさしぶりのことだなあ。一曲ごとにブラボーの声がかかって、演奏はしだいによりよくたかまっていく。緻密に構築された曲であり、わかりやすいものではないけれど、ホールぜんたいに充満した音が耳からだけでなく、皮膚からも体に入ってきたようで、まだそれは残っている。

ドナトーニについてはよくまとめられている平井洋さんのブログからどうぞ。

もうひとつはレネ・パウロ『デュエット』。ドナトーニの曲はよかったが夏にふさわしいとは思えなかった。しかしこちらは夏にぴったりのCDだ。ハワイの歌16曲をレネ・パウロの弾くピアノで14人の歌手が歌っている。ハワイアンは好きだけど、ピアノ伴奏というのは初めて聞く。そして、歌手が14人もいると、ピアノがどれほどいいのかよくわかる。みんな気持ちよさそうに歌っているからね。リンクしたアマゾンのサイトでは全曲試聴ができるようになっているので、聞いてみてほしい。「カイマナヒラ」「Honolulu,I am coming back again」をまず。こんなふうに上等で楽しい雰囲気の音楽というのは、ありそうだけど案外ないものだ。最後の「E ku'u morning dew」を歌っているのはレネ・パウロの奥さんのアケミで、これもすばらしい。人生そのものという感じがする。

レネ・パウロがこのように語っていることが実感できるCDだ。
「シンプリシティこそがハワイアン・ミュージックの際だった個性だと思うね。簡単ということとは違う。いかにシンプルにやるか、シンプルで奥深いものにするか、それこそが音楽の最も難しいところでもあるわけだからね。シンプルで、かつ奥深く、素晴らしい、それが、ハワイアン・ミュージックにはあるんだ。島の暑さ、トロピカルな空気、貿易風、湿った南風、海の香り、花の匂い、鳥のさえずり……、そういったフィーリングが音楽に溶け込むことで音楽そのものが変わるんだよ」
by suigyu21 | 2012-08-27 20:32 | Comments(0)