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水牛だより

ことしの七夕

7月7日は青空文庫の誕生日ということになっている。ことしはその日が土曜日だったので、年に一度の大オフ会の日となった。午後に校正の電子的効率のよい方法についてのレクチャーがあり、夜はいつもの宴会があった。

青空文庫午後の部は欠席して、同仁教会に向かう。「鶴の恩知らず」というコンサートがその教会であったのだ。鶴、とは鶴井千恵子さんのことで、彼女は2年前の7月に52歳で亡くなった。彼女の思い出に、というサブタイトルのついたコンサートを夫の井上茂さんと娘のはるさんが企画したこの日。鶴井さんと井上さんとは古い知り合いだ。親密に会ったりはしなかったが、鶴井さんはイワトでおこなっていた製本ワークショップに何度か参加してくれた。乳がんの治療中で(結局はそれで亡くなったわけだが)いつも毛糸の帽子を目深にかむっていたけれど、明るい目をしていた。

なぜ製本ワークショップに来てくれたのだろう。どんなことがやりたいのと、聞いてみたいと思いながら、彼女はワークショップが終わるとすぐに帰っていったし、こちらは後のあれこれが残っていて、立ち止まって話をするという時間はほとんどなかった。

同仁教会の講壇にあたるところのまんなかにピアノがあり、その右側にオレンジや赤い花に囲まれた彼女の遺影が飾られている。天井から下がっているいくつかのまあるい明かりのうち、遺影の前のものだけ音楽に合わせたようにときおりゆっくりと揺れる。揺れるのはエアコンの風の当たり具合だとわかってはいても、外から聞こえる鳥の鳴き声とともに、なんとなく不思議な感じにもおそわれるのだった。

小雨模様のなかを同仁教会から坂を下って護国寺で地下鉄に乗り、青空文庫のオフ会に向かう。集合時間に少し遅れて着いた居酒屋の個室の障子戸を開けると、みんなが拍手で迎えてくれて、現実に戻った気持ちになる。日本語の、主に文学作品のテキストを公開しつくすための仕組みに関して、ふつうは出会うことのない人たちが集まって、必要な相談をする。一年のうち364日はメールのやりとりだけの関係なので、知っているような知らないような人たちと実際に会って話すのは楽しい。まじめな話やくだらない話をする。くだらない話が私は好きだ。富田倫生さんは頭に一文字必要なくらいのまじめな考えを持つ人物であり、またそうでなくては青空文庫が繰り返し誕生日を迎えることはできなかっただろうとは思うが、そういうこともこの日ばかりは笑いの種にされてしまうのだった。
by suigyu21 | 2012-07-14 14:20 | Comments(1)
Commented by オフ会第二部机端の人 at 2012-07-17 21:01 x
腰から根が生えたような状態でして…お元気そうなお顔を拝見するだけで終わりました。ごめんなさい。Yamakiさんの周りがまるで太陽に照らされたような光景でした。
来年こそはあの場に旦那を連れていきます。彼に厳命しました。
例の製本ワークショップですが、場所を準備するだけでよろしければ、十月以降皆様をお迎えできそうです。ご検討下さいませ。