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水牛だより

愉しみ 10(2009.7.25)

ひとりで製本をするとき、いつも手元において参考にするのは、山崎曜『手で作る本』(文化出版局)だ。二〇〇六年三月に出版されたこの本を見ながら、青空文庫のテキストを二十冊くらい製本したのは二〇〇七年の春だった。シンプルな一折中とじ、ステッチ中とじ、和本、交差式製本、リボンリンプ製本、コプティック製本など、はじめてなのに見よう見まねでやってみちゃって、なんとか形にはなったものだから、青空文庫製本部の発足祝いもかねて、限定一部一律一〇〇〇円で売ったら、ほぼ完売した。

コプティック製本の花切れの編み方の図版を見てもどうしてもわからず、結局それらしく見えるようにごまかしてすましていたのはちょっとまずかったが、そんなふうにに大胆(?)になれたのはこの本にあふれている山崎さんの姿勢や考えかたによるところが大きい。

写真で見ても実物も山崎さんの作る本は美しい。でもどれも工芸品の域におさまらない美しさで、本というものが本質的に持っている量産品としての軽やかさが匂う。興味を持ったらどこからでも入っていけるすきまがたくさんあって、私を誘うのだ。

イワトから手渡された『楽園』(立山ひろみ作)の台本を見ている。A4にプリントされてちょうど一〇〇ページ、ガチャックで二か所綴じてあるだけだが、稽古に使うにはこれでじゅうぶんともいえる。これを11/25〜29日の公演に合わせて製本してみよう、そしてうまくいったら売ってみたい、というのがひょうげん塾製本ワークショップの次からの課題なのです。

まずは本文を糸でかがって綴じてみる。そのための本文を用意しなければならないので、さっきから台本を見ているわけなのです。ワードのデータをそのまま使っても、一〇〇ページならば七折にはなるから、「糸だけ製本」にはちょうどいい分量だな。文字通り「糸だけ」で糊は使わずに表紙も綴じてしまう。表紙は本文を覆って保護するのが第一目的だけれど、中身をあらわす顔の役目も担っている。顔のデザインを考えつつ好きなように遊んでみるのは楽しい。

「糸だけ製本」をマスターしたら、次には機械ではなく複数の手による量産を目指したい。『楽園』というひとつのテキストにいろんなサイズといろんな装幀、それぞれ顔の違う五十冊くらいがテーブルの上にひしめきあって並んでいるところを想像すると笑えてくる。買ってくれる人たちを悩ませましょう。

山崎曜さんのブログにはこんなことも書いてある。
「職人は自分の道具を厳選して鍛え抜き、材料を吟味しますよね。
私の態度はそれとかけ離れています。いいかげんな道具を道具に合わせて使いこなし、どんな材料でも、なんとか形にすることが、かっこいいこと、だと思ってます。」

イワトひょうげん塾の次回製本ワークショップは八月二日(日)午後一時から五時です。
by suigyu21 | 2011-01-21 19:54 | Comments(0)