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水牛だより

愉しみ 4(2008.7.25)

シアターイワト主催の高橋悠治ポータブルシアター「トロイメライ 子供の情景 2008」に水牛(=わたし)も全面協力することになっている。もとになる如月小春さんの同名の戯曲の入力という最初のしごとを終え、作者に渡して、協力者としての第一歩はスタートした。

こどもが自殺するという事件がニュースになりはじめたころに書かれた「トロイメライ」の初演は1984年だった。その後もたくさんの中高生によって演じられてきたのは、かれらにとって、この夢(トロイメライ)がリアルだったからだ。

中高生のための「上演のための小さな手がかり」の一節。「この台本を書いている間、私の頭の中になったのは、何かキラキラする光のようなもの。遠くの街のネオンサイン、雪の夜道に光があたってきらめく様子。そして夢見る子供たちの瞳……。キラキラするもの、それはたぶん、好奇心と、勇気と、愛する心とを持った〈サキ〉の瞳のこことなのでしょう。夢を、工夫してみてください」(1992 如月小春)

「白く明るい 言いようのない痛ましさ 少年の心にひろがる空白を いまにも切れそうな細い糸でつなぎとめて いのちの側へとひきもどす少女の物語を 断片となったことばと音と沈黙の織物として再構成し 1984年にこの戯曲を書き 2000年にこの世界から消えてしまった如月小春の影を追う夜の航海」(2008 高橋悠治)

初演から20年以上がたち、こどもの自殺もなんだか日常の事件のようになってしまった今、如月さんの蛍光色のファンタジーはどのように再構成されるのだろうか。作者が充電するのを待ちつつ、協力者としてはそれ以外のことを考える。

この公演は高橋悠治さんの70歳の誕生日を祝うために企画されたものなので、その日にあわせて水牛で小さな出版物を用意したいと考えた。詩集のアイディアは拡大して、みすず書房からエッセイ集が出ることになった。もう一つ、歌の楽譜集を作りたい。如月さんの詩による「都市」と「ボクハソンケイスル」は水牛楽団のレパートリーだった。今度の公演でもきっと歌われるだろうから、楽譜があるといいと思う。「冬の旅」のアンコール用に作曲された「民衆に訴える」(詩はシューベルト)や三絃弾き唄いの「おやすみなさい」(詩は石垣りん)など、どれもいろんな人に歌ってもらえたらと思う。上演用のピアノや三絃にとらわれず、伴奏は自分の出来る楽器で弾けるように、アレンジしやすいものに書き直すことを作曲者に要請している。

「冬の旅」の公演では譜めくりを担当しているが、あの楽譜はひじょうに開きにくくて、めくるタイミングでないときでさえも勝手にページが戻ったりするほどだ。そんな楽譜を出版していいのか? と全音楽譜出版社には言いたい。だから水牛の楽譜は気持ちよく開くように糸で綴じるつもり。紙もよく吟味しよう。真夏に汗をかきながら作業することになるのかな。
by suigyu21 | 2011-01-20 22:33 | Comments(0)