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水牛だより

本は寝て読むもの

寝床の用意をととのえて、入浴したら寝間着を着る。寝床に横になって枕元のスタンドをオンにしてから、部屋の電灯を消す。それからが最近の私にとって、ほとんど唯一の読書タイム。出かけるときは習慣で、なにかできるだけ薄い文庫本を一冊かばんに入れてあるけれど、老眼鏡が必要になってからは交通機関のなかではあまり読まなくなった。都内では乗っている時間も短くて、落ち着かないし。

こどものころから、眠る前は黄金の読書タイムです。とはいうものの、眠るしたくはしっかりしているし、横になるとらくちんで、どんなにおもしろいものを読んでいても、すぐに眠くなってしまう。このごろは5分でアウト、ということもあるくらい。読みたい本は山のようにあるのに、これではどうなることやら、と思っていた、昨夜まで。

昨夜読みはじめたのは加藤周一『読書術』(岩波現代文庫)。それによると、理想として端座書見ということはあったけれど、本は寝ながら読むのがいい。読書は精神のしごとであり、一読巻をおくこと能わず、寝食を忘る。「すでに寝食を忘れるとすれば、いっそ身体を忘れるのが読書の理想ではないでしょうか。しかし、どうすれば身体を忘れることができるでしょうか。もちろんいちばん楽な姿勢においてだろうと思います。」つまり寝て読めばがいいわけですね。寝台ですることは二つしかない、寝るか、愛するか。と、パリで詩人にそう言われた加藤さんは、読書はまさにその二つの行為に似ている第三の行為だという。

「第一、読書は睡眠に似ています。開いた本のページだけを除けば、読書にも部屋は明るくない方がよいし、開放的であるよりは閉じた場所であった方がよいでしょう。そして睡眠にも読書にもいちばん大切な条件は、静かなことです。(中略)大図書館の静かな閲覧室へ行ってごらんなさい。そこにいる人びとの半分は読み、半分は眠っているでしょう。
第二、読書はまた愛の行為に似ています。社会の全体から切り離されて、あなたはただひとりの相手との関係のみに生きる。その関係において、あなたは多かれ少なかれ積極的な役割を演じるので、けっして映画見物のように完全に受け身ではありえないでしょう。(中略)読書と愛というこの二つの行為ほど似たものがほかにあるでしょうか。寝台をただその一方の目的だけに使うのは、合理的な道具の使い方とはいえますまい。」

読みながらしあわせな眠りに落ちた。乱読についての手練手管は今夜のお楽しみ。
by suigyu21 | 2009-08-25 22:19 | Comments(0)