人気ブログランキング | 話題のタグを見る

水牛だより

新しい鉛筆を削ってみる

片岡義男さんがわたしの担当のエッセイ集の前に、二冊目の文房具の本を出すことになったので、何度かそのための買い物にもお伴し、撮影済みの文房具をいただいたりしている。成りゆきでこうなっているだけで、本の内容についてはなにも知らないし知らないままがいい。何がどう撮影されているのか、何をどう論じているのか、本になったのを読むほうが楽しい。

片岡さんご自慢の鉛筆を削る道具の話がおもしろく、いくつも持っているというので、ひと組だけくださいと要求した。スイス製のおりたたみナイフは削るためのもので、7センチと半分の3・5センチの二枚の刃がついている。ちいさいほうがよく切れる。そして削った破片をいれるためのガラスの小さな保存容器。おなじガラスのふたもちゃんとついている。

ふたつとも文房具としてつくられたものではないけれど、組み合わせて鉛筆を削ってみると、とても快適だ。削った破片はくるりと丸まって気持ちよさそうにガラス容器の底におさまっているから、すぐには捨てないでためておく。2Bの鉛筆だけは自分で持っていたものだ。新しい鉛筆をナイフで削ったのはいったい何年ぶりだろうか。目の前の仕事を始めるために鉛筆を削るのは、ちいさな儀式のようなシンとした時間。筆記用具は鉛筆に帰ろうかな。
by suigyu21 | 2009-02-11 22:25 | Comments(0)