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水牛だより

単なる経験不足

製本について尋ねられる機会があったので、少し考えてみた。

本の背の部分を綴じてから表紙をつけて、できあがった一冊をパタンと閉じる。何のために? 自分だけの大事な一冊として戸棚に大事にしまうためではない。だれかに手渡して、それを開いてもらうためだ。何度も何度も開いてもらうために、閉じるという作業が最後にある。

ひとつのテキストにひとつの製本(+装丁)というのが常識になっているけれど、そうでなくてもいいと思う。せっかく手でつくるのだから、ひとつのテキストにいろんな製本、いろんなテキストにひとつの製本、というのがあってもいい。

何万部も売れる本というのはあまり信用できない。本をつくったら、できるだけ売りたいとは思うけれど、それはいくらなんでも万という単位ではないでしょう。とはいえ、中学生のころには、自分の好きな本ならば、人口の10%くらいの人たちはきっと好きだろうと天真爛漫に思っていた。だって10人にひとりですからね、ありそうでしょう。1000万冊くらい売れたってぜんぜ不思議ではないのに、もちろんそんなことがあるわけはないのでした。今は一転して、100冊くらいの少部数出版をするところがたくさんあるといいな〜と思っている。万が一、注文が殺到したら、大出版社に文庫本にしてもらえばいいんです。

そういうわけで、100冊くらいなら無理なくできる手製本というのが目下の関心事になっている。
by suigyu21 | 2008-11-28 20:35 | Comments(2)
Commented by 下町のサーファーガール? at 2008-11-30 21:01 x
八巻さん、こんにちは。
私たちのことで心を砕いてくださっているのでしょうか。
身をすくめながら、拝読しました。
100冊くらい、無理なくできたら嬉しいです。


>だれかに手渡して、それを開いてもらうためだ。何度も何度も開いてもらうために、閉じるという作業が最後にある。<

確かにそうですね。
また、ご一緒させていただいた折、
指先の一針ごとに、「喜んでもらえるかな」、
「早く完成がみたいな」、などなどの千千なる想いを
綴じこめて、縫いこんでいく手作業を楽しみました。
浮かんでは消える泡沫のような想いはそのままに、
歓談し、笑いさざめき、
手が進むごとに、書物が形を現していく。

そんな新しい体験の水先案内人として、
八巻さんと出会えたことに感謝しています。
Commented by suigyu21 at 2008-12-01 13:41
>下町のサーファーガールさま
製本は自分の関心で、やりながら考えてもいることです。
お手伝いは、いろいろと実際に試すことのできる機会でもあるので、楽しみにしています。
ともかく、やりたいようにやってみましょう! すべてはそれからです。