水牛だより

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夜は月を

新月の夜に、最近若くして死んだ人の話を聞いた。ふさわしい夜だったのかもしれない。その前の夜には山田うん振付の『十三夜』を見た。うんさんによれば「「十三夜」は13人のダンサーによる動く静止画です。日本特有の湿度ある風景を描きました。ダンスという絵の具と筆が一体化した素材を使って描いた静物画です。」ということで、その夜の十三夜にやられてしまい、本物の月を見るのを忘れた。

夜になって月を見上げると、見える月のかたちは日々変化しているから、一日として同じ日はないということはよくわかる。昼間に見上げた空にうっすらと見えることも多い。きのうはきのうの月、きょうはきょうの月だ。明日があるなら、また明日も。

空に浮かぶ月は、広い海に浮かぶ小さな島のようだ。空に囲まれた月と海に囲まれた島とはどこか似ているところがあると思う。

地上は高い建物に覆われている東京だし、自宅に居ながらにして月を見ることのできる環境ではないから、見ようとしなければ月は見えない。家を探すときにコンパスを持ち歩き、ある部屋の窓からはちゃんと月が見えることを確認してから借りたという友人がいて、そうするべきだと深く納得する。南向きのベランダに出てみると、たとえ空に雲が広がっていても、月の在処はわかる、と思う日もあり、晴れているのに探せない日もある。自分にとっていろんな月夜があるけれど、萩原朔太郎のような月夜はまだ経験していない。


   月夜  萩原朔太郎

  重たいおほきな翅をばたばたして
  ああ なんといふ弱弱しい心臟の所有者だ。
  花瓦斯のやうな明るい月夜に
  白くながれてゆく生物の群をみよ
  そのしづかな方角をみよ。
  この生物のもつひとつのせつなる情緒をみよ。
  あかるい花瓦斯のやうな月夜に
  ああ なんといふ悲しげな いぢらしい蝶類の騷擾だ。


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by suigyu21 | 2014-11-26 23:09 | Comments(0)

冬立ちぬ

満月に呼ばれるようにして空を見上げると、ビルの谷間から上ってくるときで、月は下にあるほど大きい。ちょっと得した気分。めぐってくる春に、島でまた満月バーができるらしい。満月の朧月だったらいいなあ。ずっと海辺にいて、ほろほろと湿気に包まれるるのだ。

きょうは立冬だというのに、まだペラペラのコートを着ているのがちょうどいい。電車のなかでは冷たい風が降りてきたりするし。しかし、歩いているときに道端をみると、すでに山茶花がたくさん咲いている。白から赤までのグラデーションがきれいだ。冬の花だから、きっともう冬なのだな。

トーベ・ヤンソン展を見に行ってきた。ムーミン展ではなくて、トーベ・ヤンソン展。大きく引き伸ばされた写真のひとつでは、バルト海のクルーヴハル島の夏の海で泳いでいるトーベは頭に花輪を乗せて笑っている。冷たそうな海の色だ。背後に夏の家が見える。油彩の自画像がいくつかあって、写真でしか知らないトーベ・ヤンソンだけど、その写真と違和感がないどころか、写真から感じるイメージがさらにとんがっていくのだった。


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by suigyu21 | 2014-11-07 21:55 | Comments(0)