水牛だより

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日本語の自由、日本語の不自由

青空文庫に登録するために高祖保(1910〜1945)の詩集「希臘十字」(1933年)を入力している。浜野智さんからの提案だ。その作業は高祖保詩集というブログで公開しつつ進めている。

詩集ごとに入力あるいは校正を交互に担当するシステムはずっと前から青空文庫だけでなく仕事も含めて、浜野さんとの間では確立していると言っていいと思う。東京の下町生まれの浜野さんは年を重ねるごとにせっかちの度合も上昇しているので、なかなか始動しないこちらとは相性がいいのかどうかよくわからない。いい、という選択肢も捨てられないほどに時間が違う。

青空文庫では最近はもっぱら片岡義男プロジェクトを推進してきたので、古い日本語を入力するのは久しぶりだ。ゐやゑなどの旧仮名使いは慣れているので問題なく進む。そしてしだいに昔の日本語は自由だなあと感じるようになった。読めても書けないむつかしい漢字はたしかにいまよりは多い。しかし、その漢字にやわらかなひらがなのルビがふってあると、漢字と読みかたの両方から想像がひろがる。たとえば、右顧左眄《とみかうみ》、空《あだ》な、亭《たか》き梢《うれ》、陰《みほと》、薄暮《かはたれ》、のように。

さらに漢字の熟語などにカタカナのルビがふられているものも多い。なるほどと思うものもある。たとえば、錬金術《アルケミイ》、喜劇歌《コミック・オペラ》、槓桿《ポオル》、弁証法《デアレクテイク》、巻雲《サアラス》、快走艇《ヨツト》、心《エスプリ》、のように。漢字をこのように読むことはいまの絵文字につながっている、と言ってみたくなる。

さらなる漢字には、いわゆる外字もあるので、JIS漢字コードが付されている漢和辞典がかかせない。たとえば、「※[「口+愛」、第3水準2-F3-7]《おくび》」のようにきちんと示さなければいけないのだ。口と愛とが合わさると、おくび、となるなんて。

自由と不自由とはわかちがたい。2013年のいまと1933年がつながっていることを日本語の細部から確かに感じるからだ。
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by suigyu21 | 2013-05-30 22:06 | Comments(1)