水牛だより

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黒い隣人

自宅に近いところに住まわっているカラスがどのくらいいるのか見当もつかないが、一方的に親近感を覚えるヤツらがいる。どちらも鳴き声で、いるな、とわかる。ひとり(と言わせてもらおうか)は「わっはっはっはっは」といつも笑っている。ひとりは「ば〜か〜」と高い屋根の上からいつもわたしを笑う。

ときどき上から降ってくる人間のような「声」を認識するときは、たいてい道を歩いているから、笑いをこらえる。そしてどこかに出かけたり、帰宅するときには忘れている。

今月の半ばごろ、自宅で窓をしめきっているときにも笑い声が頻繁に聞こえてくるようになった。どうしたの?笑子さん、と勝手につけた名前で問うてみるが、答えが返ってくるはずはない。

土曜日の午前中、洗濯物を干しにベランダに出ると、笑子さんとおぼしきハシブトガラスが正面のマンションの屋根でしきりに「わっはっは」とやっている。ふだんとはまるで違うなと思って観察しているうちに、こちら側の隣接するマンションの前にある電柱の上のほうに見つけた。色とりどりの針金ハンガーがあらゆる方向にのびている巣らしきものを。そしてそこにいるもう一羽の見知らぬカラスを。「わっはっは」と笑い声で威嚇しつつテリトリーを知らしめているのは雄であることは、ちょうどそのときに読んでいた『カラスの教科書』で知ったので、笑子ではなくエミッチと改名した。

生まれてはじめて、カラスのひなを見ることができるのだと期待した。日曜日には彼と彼女が入れ違いに巣から出たり入ったりして、どこからか巣のための部品を調達してくるのをそっと眺めた。巣をつくっているときにはカラスは他からの視線を敵視すると『カラスの教科書』で知ったから。

そして月曜日。ベランダに出てみると、電柱には東京電力の車から作業用の箱が上げられていて、そこに乗っている作業員が巣を撤去中だった。誰かが通報したのでしょう。通報は奨励されている。突然巣を壊されたエミッチのカップルはそれから2、3日はあたりでうろうろしていたが、いまはどこかにいってしまったようだ。君も僕も落第だね。元気で生きのびてほしい。
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by suigyu21 | 2013-04-26 21:29 | Comments(1)