水牛だより

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願ひは……

書店で手に取って、おもしろそうと思った本は、少しは考えたりもするけれど、だいたい買うことになってしまう。次のときに、と思っていると、その次のときには書店からなくなっているという経験を何度もしたので、ともかく買っておく。必要な本を探すためにひさしぶりに自分の本棚および本の堆積を見ていて、まだ読んでいない積読状態のおもしろそうな本がたくさんあるのを発見しておどろいた。そうだ、これらをまず読まなくちゃ。図書館で借りる本は返却日が決められているので、それまでになんとか読む。ついそちらが先になって、持っているものはいつでも読めるからと後回しにしているうちに、存在そのものを忘れてしまう。

このごろはゆっくりと本を読む時間というのがとても限られている。なぜだろうかと問うまでもなく、コンピュータの前にでんとすわっている時間が長いからだ。閉館間際の立原道造記念館に行って、展示を見たあとで絵葉書を何枚か買った。その中の一枚には道造自身の筆跡でこう書いてある。

  願ひは……
  あたたかい
     洋燈の下に
  しづかな本が、
     よめるやうに!

道造さま、仰せのとおりでございます。きょうのように雨が降ってぐんと秋が深まった夜は、本を読むのに最適だ。さあ、今夜はマシンを早々にシャットダウンして横になり、ふとんにぬくぬくくるまって、なにか、しづかな本を読もう。洋燈と椅子ではなく、電気スタンドと布団が私にとっての好もしい読書環境です。
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by suigyu21 | 2010-10-26 17:22 | Comments(0)

4+8は続く

しばらく間があいてしまいましたが、四釜裕子と八巻美恵の「4+8製本ワークショップ」を11月21日(日)に行います。午後1時から5時まで。いつもの神楽坂シアターイワトの2階です。秋のおわりの昼下がりは製本のためにある。快適な時間を楽しみたいと思います。

連句集を綴じることを考えていましたが、それはいったん白紙にもどして、参加してくださるみなさんの「こんな製本してみたい」という希望を募ります。全員がおなじ課題に向かう必要はありませんので、各自好きなようにするのもいいと思っています。最低限の材料はこちらで用意しますが、表紙の布や紙、そして本文など、使いたいものがあれば持ってきてください。参加費は材料なども含めて3500円です。
内容については、今月中にもう少し具体的に決めて、またここでお知らせします。

いまのところはこんな状況ですが、参加ご希望のかたはメールをください。
info@suigyu.com あるいは haru@jazz.email.ne.jp まで。
興味を持ってくださって、さらに回りに興味を持ちそうな人がいたら、ぜひとも情報をお伝えください。
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by suigyu21 | 2010-10-09 14:25 | Comments(1)

島で

片岡義男さんの『時差のないふたつの島』を青空文庫で公開した。これでやっと三冊め。最初の一字から入力しなくてはならないのだから、歩みがのろいのはしかたがない。次の『波乗りの島』にむかって進もう。

青空文庫版には載せなかったが、1987年に出版されたオリジナルの『時差のないふたつの島』には津野海太郎さんが解説を書いている。ちょうど片岡さんと水牛とがはじめてほんの少し交差したころだ。片岡さんがホストの「気まぐれ飛行船」というラジオ番組に津野さんと高橋悠治さんがゲスト出演して、水牛楽団の歌がオンエアされた。ハワイの開発に反対する「フジムラ・ストア」という歌を片岡さんがおしえてくれたのは、たぶんその「気まぐれ飛行船」がきっかけだったのではないか。津野さんの解説によると、すでに水牛楽団のレパートリーになっている。

『時差のないふたつの島』は発売と同時に読んで、とてもおもしろいと思った。小説家が小説を書こうとしていろんな人と出会ったり再会したりしながら、小説のアイディアを手にいれていく、という小説。主人公の「ぼく」が書いた文章というのが間に挟まれていたりして、なんてヘンな小説だろうと思ったことをなつかしく思い出す。そしてそのまま今でも好きな小説のひとつという位置にあり続けている。
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by suigyu21 | 2010-10-05 23:50 | Comments(1)

青は色だけでなく

自宅から駅まで歩く道の途中に、柑橘類の木が二本、ある。ふつうの家の塀の際にあって、特別手入れをされているようには見えない。繁りたいように繁っている。五月ごろに花が咲く。花が咲いているときに通りかかると、たいていひとつだけいただいて、歩きながらその芳香を嗅ぐ。香りは花が枯れてもしばらく残っている。

晩秋にはたわわに実っている果実もひとつ、いただいたことがあるが、すかすかで酸っぱくて食べられなかった。いったい何という種類なのかもわからない。柑橘類、としかいえない。

この時期は青い若い葉をときに一枚もらう。花のような甘さはないが、すっきりとした「青い」香りが葉を折った瞬間にたちのぼる。かばんやポケットに入れておくと一日は香りがしている。鼻から直接脳にきくようで、やめられません。

今年初の早生みかんを買って、その薄い緑色の皮をむいていたら、葉っぱと同じ青い香りがした。青い果実ってこのことなのね。
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by suigyu21 | 2010-10-01 20:16 | Comments(0)