水牛だより

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肝心かなめの領域

ジンは想像力のはたらきをよくすると請け合っているのはルイス・ブニュエルだ。『映画、わが自由への幻想』(早川書房 1984)には「現世のたのしみ」というタイトルでお酒と煙草についての一章がある。その一章のためだけにもこの本を手放せない。バーとアルコールと煙草は好きでたまらない、肝心かなめの領域である、とブニュエル自身も書いている。煙草が身につかなかったのがちょっと残念に思えたりします。その中の実用的な一節を以下に。

「いうまでもなく、わたしはバーでは葡萄酒を飲まない。葡萄酒は純粋に肉体的なたのしみであって、どうあろうと、想像力を刺戟してはくれない。
 バーに坐って、夢想をよび出し、維持するには、イギリス産のジンがなくてはならぬ。わたしのごひいきの飲みものはドライ・マーティニだ。
 ………
 長い経験の結実であるわたし流のつくりかたを、ここで披露させていただきたい。いつもこのやりかたで、なかなかうまく行っているのだ。
 客が来る前日に、グラス、ジン、シェーカーと、必要なものはすべて冷蔵庫に入れておく。手持ちの寒暖計で、氷が零下二十度前後になっていることをたしかめておく。
 翌日、友人たちがそろってから、いるものを全部とり出す。とびきり堅い氷の上に、まずノワイー・プラットを数滴と、アンドストゥーラを小さな茶さじに半杯、たらす。一緒にシェークして、外に出す。二通りの香りがうっすらついた氷だけとっておき、この氷の上に、生《き》のジンを注ぐ。もう一度さっとシェークして、グラスにつぐ。それだけのことだが、これにまさるものはない。」
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by suigyu21 | 2007-09-30 20:38 | Comments(3)

「理性に油を注ぐ酒」

「だってね、あなた、かつてはホントに凄かったんですよ。食事の伴どころか、食事代削ったって酒代だけは確保する。飲むためだけに、飲んでいた。ただし、昼間から飲むことだけはするまい、その一線を越えるのはマズイと思っていたので、ひたすらに夜を待つ。暗くなってくると、ソワソワする。
 さあ飲めるぞ、嬉しいな。
 私は大勢で酒を飲むのが好きではない。うるさい。くだらない。集中できない。したがって、夜な夜なアパートの一室で独り酒を飲むことになるのですが、これが凄かったんですよ。一升瓶を抱え込んでいるわけですから、ドブドブ注いで、ガブガブ呷る。安酒は全身を経巡り、思考は脳天を突き破り、もう火が出るかという勢いでしたね。
 なんでそんなに酒を飲んだのか、欲したのかという理由が、つまりこれのようです。たぶん変わっています。酒を飲むと、私は異様に頭が冴えてくる。「頭が」というのは不正確で、正確には「理性が」というところ、酒を飲むと私はいよいよ理性的になってくる。これが自分で面白くて、夜な夜な鯨飲しては理性に油を注いでいたようです。」
(『暮らしの哲学』池田晶子(2007 毎日新聞社))

飲んでいる時、「異様に頭が冴えてくる」状態になることは私にもある。お酒は強くないし、飲むようになったのは30を過ぎてからなので、こういうのを読むとうらやましい。昼間からキンと冷えたジンなんかをストレートで飲んで、すずしい顔をしていられたらすてき。休日の晴れた昼にそんなことを思ってみる。見果てぬ夢です。
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by suigyu21 | 2007-09-22 11:51 | Comments(3)

地味に生きる

奄美についた日の夜、食事しながら黒糖酒を飲んで、お店の人となにやら話していたら、島の人ですか、と聞かれた。まだ一日未満の滞在なのに、そんなに奄美にとけこんでいたのだろうか。そういえば、タイや香港ではよく道を尋ねられたな。香港のデパートで、何か話しかけてくるおばさんがいたので、「広東語はわかりません」と言ったら、「そお?」とぜんぜん驚かず、言葉が通じないことなんかおかまいなしにどんどん話しかけてくる。ついに上着の試着につきあって、知ってる限りの広東語の単語を駆使して似合うの似合わないのと意見まで言い、おばさんとの一期一会を楽しんだ。

どこでも地元の人間だと思われるのは、そこに溶け込んでいるからというよりは、目立たないからだと思う。地味に生きているのだ。
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by suigyu21 | 2007-09-16 17:47 | Comments(3)

こどものころ、阿武隈川の支流の近くに住んでいたことがある。本流(?)に合流する直前のところだったので、ふつうに大きな川だった。毎日一度は岸の上に立って観察していると、いろんな風景に出会う。白いヘビが泳いでいるのを見たこともあった。流れの際には深いところもあって、そこは深い静かな青。水はつめたくて、夏、泳いでいるこどもがおぼれたりする。ふだんは川原がひろがっているのだが、雨がふると流れは勢いをまして濁流となり、川原を埋め尽くす。

というようなことを台風一過の朝に思い出して、多摩川を見に行った。田園都市線二子玉川駅はプラットホームの三分の一くらいは多摩川の上にかかっていて、見晴らしがよい。そして、多摩川は今まで見たこともないほどに増水していた。土手の下まで水がせまり、遊歩道も野球場もみんな水の下。すごい!
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by suigyu21 | 2007-09-07 22:24 | Comments(0)

9月

水牛を更新しました。見てね。

わかいころ、偏屈なじいさんの友だちがいるといいなあと思っていた。ふとまわりを見ると、昔からの男友だちはみな偏屈なじいさんになっている。しかし、こちらもちゃんとばあさんになっているので、わかいころの夢が叶ったというわけにはいかない。ばあさんには偏屈な若いボーイフレンドがあらまほしい。その気になってみようか。
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by suigyu21 | 2007-09-03 00:20 | Comments(3)