水牛だより

夢(トロイメライ)、ふたたび

スタジオイワトでの「高橋悠治50人のためのコンサート」その4回めのプログラムは「藤井貞和の短歌による新作『雪降りて/悲しみに』」と「如月小春によるポータブルシアター『トロイメライ』」

10月13日(土)は午後2時と午後6時、14日(日)は午後2時の計3回公演です。出演は高橋悠治、楫屋一之、足立昌弥、辻田暁の4人だけ、よりコンパクトになった。そして植松眞人の映像が加わる。

カイとサキという12歳の少年と少女の夢の情景は、シューマンの「トロイメライ」の演奏で始まる。それからふたりが登場して、その夢は1時間ほど続き、また始まりに戻ってくる。そしてシューマンの「トロイメライ」も最後にまた戻ってくる。カイとサキのふたりの夢が消えたあとの「トロイメライ」は始まりの「トロイメライ」とはまったく違って聞こえる。この世界で生きている哀しみが深く感じられて、その瞬間はほんとうに美しく悲しい。本番だけではなく、稽古のときも、その場面が繰り返されるたびに同じように感じるので、その度に不思議な気持ちになる。

12歳の少年カイと少女サキは、物語というよりは断片的に続いていく情景にそのまま固定されて、年をとらずにいつもそこにいる。何度死んでも、そこにいる。郊外のマンションの屋上、遠い宮殿の女王、おかあさんのカレーライス、杉並区の自動販売機、ヒョロリ、などは、ふたりの子供とともに、白い男の持つ白い地球の夢=トロイメライでもあるのだろうか。

高橋悠治のコメント。
夢(トロイメライ)は消えて痛ましい空白に取り残された子どもたち。
音楽は2008年には即興だったが2012年は細部まで作曲されている。
如月小春の1980年代前半の作品『トロイメライ――子供の情景』(1984)から編集した対話に加え『家、世の果ての……』(1980)『ANOTHER』(1980)『MORAL』(1984)からの詩と作曲の引用がある。ピアノはシューマンの『トロイメライ』以外に『月光の曲』のパロディを含む。

楫屋一之によるコメント。
1980年前後、若い劇作家たちが、核戦争後の世界を寓話的に描くことがあった。なにもかもが消滅した後の世界。如月小春の物語では、いつも“白い男”が白い球体を抱え、歩み、立ち止まり、うずくまり、なにもない世界に在り続けることの想いをただしていた。『トロイメライ』でも“白い男”は、やや緩慢な呼吸を繰り返しながら、辛く哀しい眼差しを無辺の彼方に投げかけている。

入場料は3500円(学生3000円)、イワトのアクセスはこちらで。
お申込みと問い合わせは、haru@jazz.email.ne.jp あるいは電話 08054523165 で。

制作は平野公子(イワト)と八巻美恵(水牛)。2008年に続いて2度めの制作となる。ポータブルシアターと名づけたちいさな編成だが、いまの世の中で自力で上演するのは、我らが非力すぎるということはあるかもしれないが、そんなにかんたんではありません。
この機会にぜひ見てください。
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by suigyu21 | 2012-10-01 17:59 | Comments(0)