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水牛だより

愉しみ 6(2008.11.25)

「トロイメライ」の三日間はいろんな人と会えてうれしかった。このマガジンイワトでおなじみの何人かにも会うことができた。文章を読むのはもちろん楽しみだけど、それを書いた人と会うのにはまた別の楽しみがある。文章から勝手に想像しているイメージとその人がおんなじでもまったくはずれでも、どちらでもふっふっふっ、と笑えるのはなぜかしら。

「トロイメライ」の主人公のサキとカイは12歳、演じる遠藤良子さんと鈴木光介さんの実際の年齢は少なくともその二倍以上ではあるだろうと思うけれど、ふたりともちゃんと12歳になっている。初日のステージをドアの脇の補助椅子にすわって見ていたら、ふとひらめいた。この12歳のコウスケくんが「ぼくは12歳」を歌ったらどうだろう、と。まだ一度も男の子に歌われたことのないこの歌はコウスケくんを待っていたのかもしれない。このアイディアは自分だけの一夜の夢だとしても悪くないと思ったが、それなら「うたのイワト」でやってみる? とシアターイワトがまた太っ腹な提案をしてくれたのだった。即座にコウスケくんとピアニスト(=作曲者)に快諾をもらって、ぐんぐん現実のものとする。

「ぼくは12歳」はほんとうに12歳で自殺した岡真史くんという男の子が残したいくつかの詩に作曲されている。藤井貞和さんの詩を歌ったり語ったりする「寝物語」は病気でいじめられてもうすぐ死ぬ男の子の話。でもそこには死だけがあるのではない。ということがコウスケくんのまっすぐな声からはきちんと伝わるような気がする。

男の子が12歳ならば、もうひとりおばあさんがいてくれるといいと思うと。新井純さんはまだおばあさんではないけれど、息子を戦争で亡くした「祖母の歌」(詩は木村迪夫さん)などを歌ってくれることになった。

『高橋悠治ソングブック』をうたう、うたのイワトの初日は2009年1月29日(木)午後七時からです。

『高橋悠治ソングブック』は綴じていない在庫がまだ少しあります。限定100部の私家版として作ったので、委託販売などはしません。でも欲しい方にはもちろんおわけします。水牛あてにメールをいただければ内容や価格についてお知らせいたします。手製本というそのことだけですぐに愛着を持っていただけるようで、そのことは少部数の出版というのを考え直すきっかけになるかもしれないと思っています。綴じるのに使った麻糸はとてもじょうぶですが、でも切れることがないとはいえません。そうなった場合には綴じ直しますからご安心ください。アフターケアも万全なのです。糸が切れるほど使われたら楽譜はしあわせ。
by suigyu21 | 2011-01-20 22:38 | Comments(0)